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メディア掲載情報

【新聞】「便失禁」新治療4月から保険適用装置埋め込み神経刺激(2014年6月6日付 熊本日日新聞朝刊)

2014-06-06
メディア掲載情報 病院からのお知らせ 患者様・ご家族様へ

当院で4月から導入しました便失禁の新しい治療法「仙骨神経刺激療法」について新聞掲載されましたのでご紹介します。

(2014年6月6日付け熊日日新聞朝刊掲載記事転載)

 「便失禁」新治療 4月から保険適用 装置埋め込み神経刺激

 本人の意思に反して便が漏れてしまう「便失禁」は、命に関わる病気ではないが、羞恥心や自己嫌悪をもたらし、生活の質(QOL)を著しく低下させる。国内の患者は推計500万人以上ともいわれるが、治療を受けている患者は限られる。昨年9月、体内に埋め込んだ装置で排便をつかさどる神経を刺激し、症状を改善する機器が薬事承認を受けた。この4月からは健康保険で治療を受けられるようになった。人知れず悩んでいる患者にとって大きな朗報だ。
 「毎日、知らないうちに便が漏れています」  そう訴える関東地方の男性Aさん(78)が、社会保険中央総合病院(東京)を受診したのは2009年12月。大腸肛門病センターの山名哲郎部長が肛門の内圧、つまりは「締まり具合」を検査すると、正常値をかなり下回ることが分かった。
 便を硬くする薬で1年近く治療を続けた。毎日あった便失禁はかなり減ったが、それでも週に3回以上。外出もままならず、生活への支障は解消されないままだった。
 ちょうど、日本メドトロニック(東京)の治療機器「仙骨神経刺激システム」の国内臨床試験(治験)が11年1月から始まる予定で、同病院も実施施設の一つだった。山名さんから説明を受けたAさんは「もっと症状を改善したい」と、治験への参加を決意した。
 「排せつは人間の尊厳に関わる。便失禁の患者さんは家に閉じこもり、社会生活が破綻してしまいます」と藤田保健衛生大の前田耕太郎教授(消化器外科)は話す。  前田さんによると、便失禁の原因は(1)出産や外傷による肛門括約筋や神経の損傷(2)直腸がんや痔[じ]などの病気(3)過敏性腸症候群や脊髄の障害、などさまざま。原因不明のケースもあり、加齢の影響も考えられている。患者は女性に多い。
 従来は、繊維分が多い食事の摂取や定期的な排便習慣の指導、括約筋の筋力トレーニング、薬の投与といった保存的療法がまず行われ、それで改善しない場合は、損傷した括約筋の修復や人工肛門造設などの外科的療法が選択されてきた。
 しかし、出産後の括約筋修復以外は保険が使えず、薬に至っては、そもそも便失禁用に認可されたものが皆無。過敏性腸症候群などの薬を流用しているのが実情だった。
 そこで今回の治療法が注目される。心臓ペースメーカーに似た装置を腰の皮下に埋め込み、リード線に電気を流して骨盤中央にある仙骨周辺の神経を刺激する。ただ、なぜこれで失禁症状が改善するのか、詳しい仕組みは分かっていない。
 特徴的なのは治療の進め方だ。まずリード線だけを体内に埋め込み、体外の装置に接続して約2週間、試験刺激を実施。これで症状が改善した患者にのみ刺激装置を埋め込む。刺激の強さは専用の機器を使って体外から調整できる。  治験に参加したAさんの場合、便失禁は11年3月の手術直後に術前の半分以下にまで減少。最近1年ほどはほぼゼロとなり「日常生活が楽になった」と喜ぶ。
 治験全体では、手術の半年後に便失禁の頻度が半分以下に減った成功例が21例中18例(86%)あった。手術による重い合併症はなかったという。  「既存の治療法で改善しなかった患者さんも希望が持てます」と前田さん。山名さんも「これを機に便失禁の診療に社会の目が向けられ、埋もれている患者さんの掘り起こしにつながればいい」と期待する。
 日本メドトロニックは今後、関係学会と連携して医師向けの講習などを実施。この治療法の適正な普及に努めていく考えだ。 高野病院(熊本市)でも導入


 県内では高野病院(熊本市中央区帯山)が4月から「仙骨神経刺激システム」を導入。7月にも初の治療を実施予定という。
 担当の高野正太医師(43)=肛門科・大腸肛門機能科部長=は想定している治療の対象者として、「薬の内服や食事療法、肛門括約筋のトレーニングなどの保存的療法の効果がなく、便漏れが週に5、6回ある人」を挙げる。
 高野医師は「加齢も便失禁の原因となるため、高齢化の進行で悩む人が増えてくると予想される。外出の機会が減るなど生活の質が低下した人にとって、新たな治療の選択肢となる」と話している。(田中祥三)

 

■便失禁(便漏れ)に対する新しい治療 仙骨神経刺激療法 Sacral Neuromoduration (SNM)のご説明のページもあわせてご覧ください。


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