機能性便排出障害
当院の高野正太が、NHKの「ガッテン」に出演しました 2018年3月14日(再放送5月5日)に放送されました内容についてお問い合わせを頂いておりますので、病態や治療についてご説明いたします。
院長
高野正太医師
慢性便秘(症)の分類
引用元:慢性便秘症診療ガイドライン2017
便秘の方の多くは、以下の3種類で悩まれている事が多いです。
主な原因
大腸が便を送る動きが正常にもかかわらず排便回数や排便量が減少する便秘です。原因として食事の摂取量や食物繊維が少ないことが挙げられます。
大腸が便を送る動きが悪いため、排便の回数や量が減少する便秘です。原因として、特発性(原因不明)、症候性、薬剤性などが挙げられます。
直腸まで便が下りてきているのに、スムーズな排便ができない便秘です。原因として、「便意を脳に伝える力」や「便と捉えて押し出す力」が弱くなっていることが挙げられます。
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今回、放送となりました 『機能性便排出障害(別名:排便困難型)』を 詳しくご説明します。
機能性便排出障害は、下記の様に分類されます。
直腸瘤
直腸と膣の間の壁が薄くなり、直腸が膣の方へ袋状に突き出てくるものです。便を出そうと力んでも、この袋に便が溜まり外に出にくくなります。
長い間便秘に悩んでいる女性こそ、注意が必要です。
排便協調運動障害
排便時に十分な腹圧がかけられなかったり、緩むはずの骨盤底筋群(恥骨直腸筋もこの一部)が逆に収縮したり、直腸の感覚が低下して便意を感じなかったりと、様々な原因があります。
排便回数は減少せず、残便感のために1日に5~10回などと逆に増加することがあります。
当院では便漏れや便が出にくい方に対し、直腸肛門の機能を客観的に評価するために、様々な検査方法を有しています。
検査の一例
肛門内圧検査
肛門に力を入れない時や力一杯しめた時の肛門のしまる強さ(圧力)を測定。
直腸感覚検査
少しずつ膨らませながら、最初に便意を感じた時と、便意を我慢できなくなった時のバルーンの大きさを測定。
直腸肛門反射検査
直腸内にバルーンを入れて、膨らませた時の肛門の反応を調べます。
排出能力検査
肛門内にバルーンを入れて膨らませ、どの位の量を力んで排出できるかを調べます。
「ガッテン」で紹介された、ディフェコグラフィー検査です
ディフェコグラフィー検査
排便時の直腸や肛門の動きをX線で見ます。
正常
排便協調運動障害
この様な検査を行うことで正しい診断が行え、結果最適な治療方法を見つけることができます。
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機能性便排出障害の治療について
当院では大きく以下の5種類を、患者さんの状態に応じそれぞれを組合わせて、症状緩和を目指しています。
直腸肛門機能回復訓練
排出訓練
直腸の中にバル-ンを入れ、空気を注入して膨らませ、擬似的に便を作ります。
これをいきんで排出する訓練です。訓練では、腹圧のかけ方、肛門の弛緩の方法排便姿勢を含めて指導します。
バイオフィードバック訓練
肛門が緩む感覚を取り戻すことを目的とし、自分の肛門括約筋の動きを見ながら上手に緩める方法を習得する訓練です。
排便姿勢
『考える人のポーズ』は、排便に適した姿勢だった!!
前かがみの姿勢をとると、恥骨直腸筋が緩んで直腸と肛門の角度が開き、便が出やすくなる。
高野正太医師が、当時勤務していた留学先の米国のクリニックにて研究し、欧州の専門誌に便排出困難を訴える患者さんに対する指導を行う上で有用であると旨の医学論文を発表いたしました。
論文の内容は一般向けのメディアでも取り上げられました。
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運動療法
当院では可能な限りスムーズに排便が行えるように排便困難な方に対して腹筋を鍛える運動療法や姿勢や息み方の指導、肛門を締める感覚が解らない方に対しては電流治療器を利用して、筋肉を収縮させながら力を入れる感覚を覚えていただくなど、日本でも珍しい大腸肛門リハビリテーションによる排便トレーニングを実施しています。
「ガッテン」で紹介された訓練
男性が椅子に座って、数を数えている。
「ガッテン」で紹介された場面です。
これは、「5秒間お尻を締めて、5秒間緩める」、これを繰り返し行うご家庭でも簡単にできる訓練です。
恥骨直腸筋を締め上げる。1・2・3・4・5。
そうすると恥骨直腸筋が疲れます。
そして脱力し、1・2・3・4・5。
肛門を閉じたり開いたりすることで、恥骨直腸筋を緩めるコツをつかみます。
腹圧トレーニング
うつ伏せで行う、腹圧コントロールを目的としたトレーニングです。
お腹を引き込んだ状態で深呼吸を2回繰り返します。
食事療法
当院ではコンチネンスアドバイザーと呼ばれる、日本コンチネンス協会から認定されている「排便に関する知識が豊富な看護師」が在籍しています。排泄で困っている方へ医師の指導の元、食生生活・運動・生活のリズムなど様々なアドバイスを行い、排便に関する悩みを解決するための治療のコーディネートを行っています。
大腸肛門機能診療センター
当院には、大腸肛門の「働き」を専門に診る全国でも珍しい『大腸肛門機能診療センター』があります。
そこでは、直腸肛門機能を運動・感覚機能の両面から捉え、最先端の設備と豊富な知識で検査・診断し、適確な治療を行っています。