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検査情報

透視造影検査

排便障害(肛門括約筋不全、直腸膣壁弛緩、直腸脱、便排出障害)症例に関する検査

当院は便漏れや便が出にくい方に対し直腸肛門の機能を客観的に評価できる画像診断を行っています。排便造影(ディフェコグラフィー)検査は、疑似便を用い、直腸から肛門を通って排出に至る状態をX線下に再現させる検査法で、直腸肛門の機能あるいは形態的な変化を観察する検査法です。

排便造影検査で診断される代表的な機能障害
〔1〕直腸膣壁弛緩

ほとんどの場合女性にみられ、直腸の前壁、つまり膣の後壁が脆弱化し袋状となり前方に便が停留し排便障害をきたします。息んでも便が出にくい、そこまで便がきているのに出ない、膣の前側を圧迫して便を出すなど、排便困難の症状を多く認めます。 排便造影検査では、側面像で直腸の前方に袋状に突出する直腸瘤を認めます。

左図より、安静時、肛門収縮時、排便動作時

 

〔2〕肛門括約筋不全

肛門括約筋の力が、器質的あるいは機能的に障害を受け、十分な保持能力が得られないため便が漏れる状態を肛門括約筋不全といいます。主な症状として便もれ・ガス漏れ・腸液の漏れがあります。画像の特徴として、肛門収縮時に肛門管が閉まらない場合や重症では安静時でも肛門括約筋が常に開大しています。

左図より、安静時、肛門収縮時

 

〔3〕直腸脱

直腸脱とは、直腸の重積した状態を指しますが、正確な病因・病態はまだ完全には解明されていません。直腸脱の分類は

  • 1.肛門から脱出を認めない不顕性直腸脱(直腸重積)
  • 2.肛門から粘膜のみの脱出を認める不完全直腸脱
  • 3.筋層を伴って脱出する完全直腸脱

の3つに分類されます。画像の特徴として、不顕性直腸脱の場合は怒責時に肛門内で直腸粘膜の全層が重積し肛門管を塞いでしまうように下降することが多く、また、完全直腸脱の場合は怒責時に直腸粘膜が筋層を伴って肛門より脱出してくる様子が観察されるなどがあります。この脱出により肛門管レベルでの腸管の内腔が狭小化を起こし排便困難を引き起こす場合があります。

左図より、安静時、排便動作時

 

左図より、安静時、排便動作時

 

〔4〕骨盤底筋協調運動障害

怒責時に肛門挙筋が肥大し収縮が強まり、排出困難を来す疾患を肛門挙筋症候群といいます。肛門挙筋は、腸骨尾骨筋、恥骨直腸筋の3つの筋肉から形成されますが、特に本疾患では恥骨直腸筋が収縮します。症状としては排便困難、便柱狭小、排便時疼痛、残便感、腹満などがあります。画像の特徴として排便動作時に恥骨直腸筋の収縮が強くなり、直腸肛門角も閉じ、息んでいるのに逆に閉めているような画像を認めます。

左図より、安静時、排便動作時

 

〔5〕骨盤会陰下垂症(会陰下垂症候群)

骨盤内臓器間の結合織が脆弱となり、腹膜底、骨盤底、会陰を含めて骨盤内臓器の下垂が起きます。画像の特徴として排便動作時には腹圧により下垂した骨盤内臓器により肛門管の位置がかなり下垂します。

左図より、安静時、肛門収縮時、排便動作時

 

高野病院では、大腸肛門の専門病院として様々な排便障害に対し、より詳細な機能検査を行っています。放射線科では主に画像診断による機能検査を担い、正確な診断ができるように日々学会活動や臨床研究に取り組んでいます。