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疾患情報

消化器外科

鼡径(そけい)ヘルニア

鼡径(そけい)ヘルニア
鼡径(そけい)ヘルニアとは

足の付け根部分のことを「鼡径部(そけいぶ)」といいます。

「ヘルニア」とはもともとはラテン語で飛び出すという意味で、
鼡径ヘルニアとは足の付け根から小腸やお腹の中の脂肪などの組織が出てくる病気です。

本来ならばお腹の中に収まっているはずの腹膜や腸の一部が、鼡径部の筋膜の間からはみ出して皮膚の下に出てきてしまう、俗にいうところの「脱腸(だっちょう)」のことです。


 
 
鼡径ヘルニアの【原 因】

鼡径ヘルニアは、子供では先天的なものが多く、大人では加齢によって筋膜が弱くなることが原因と言われています。
40歳以上、特に60歳前後の男性に多くみられ、ときに陰嚢(いんのう)まで脱出が及ぶこともあります。
女性の場合は男性に比べ少ないですが、20~40歳の鼡径ヘルニアが多い傾向があります。

 鼡径部は筋肉や筋膜が複雑に重なり合った構造になっています。
ここに鼡径管というトンネルが存在しており、男性では精巣にいく血管や精子を運ぶ精管がこのトンネルを通っています。女性の場合には子宮を固定する靱帯(じんたい)の通り道となっています。このトンネルが先天的に弱かったり、加齢によってまわりの筋肉や筋膜が弱くなることでゆるんできてしまい、ゆるんだところに腹圧がかかり、隙間から腹膜が袋状に飛び出てくるようになります。この袋状になったところに腸や脂肪などの組織が入り込んで飛び出してくるためにヘルニアが起こります(外鼡径ヘルニア)。
また、腹壁に弱いところがあり、加齢とともに筋肉が衰えると、この弱い部分が腹圧で直接押し上げられて、やはり袋状に飛び出てくるヘルニア(内鼡径ヘルニア)もあります。どちらのタイプも最終的に飛び出る場所が同じなので見た目は変わりません。

他に鼡径靱帯の下方に脱出する大腿(だいたい)ヘルニアがあります。
鼡径ヘルニアは腹圧がかかる作業を良くする人や、便秘などでトイレで力む習慣がある人、喘息などで良く咳をする人、内臓脂肪が多くお腹が出た人や妊婦さんなども腹圧が上がり鼡径ヘルニアになりやすいと言われます。

大腿ヘルニアは中年以降の女性に多くみられ、出産回数の多いやせ形の女性に多いと言われます。理由として、女性の方が男性より大腿輪という鼡径靱帯の下の隙間が広く、多産により大腿輪周囲の筋肉や筋膜が弱くなるため脱出しやすいことがあげられます。

 



鼡径ヘルニアの【症 状】
重いものを持ち上げたり、咳き込んだりしたとき、力んだときなどお腹に力がかかったときに足の付け根近くにふくらみを触れたり、突っ張り感、違和感などを認めます。ヘルニアの程度が軽いうちは、ふくらみは寝たり、押さえると引っ込んで戻ってしまい、特に痛みも無いことが多いです。
ヘルニアの程度がすすんでくると、違和感が強くなったり、ふくらみが大きく・硬くなったりします。押さえても戻りにくくなり、痛みや吐き気を伴うこともあります。
脱出した腸が戻らなくなり、根本で締め付けられると(かんとんといいます)腸の血行障害を伴い腸管の穿孔(せんこう)など重篤な合併症を起こすこともあります。このような場合、早急に治療を受ける必要があります。大腿ヘルニアでは腸が出てくる穴がせまく、かんとんを起こしやすいといわれます。

 


 

鼡径ヘルニアの【検 査】
ほとんどの場合は患者さんの訴えと、視診、触診でわかります。お腹に力を入れてもらったり、立ってもらってふくらみを確認したり、でっぱってくる出口を指で診察することでわかります。わかりにくい場合は超音波検査やCT検査などを行うことがあります。

  


鼡径ヘルニアの【治 療】
いったんできてしまったヘルニアは薬では治りませんので、手術が必要になります。
対症療法としてヘルニアバンドやサポーターといった、ヘルニアの脱出を押さえ込むものがありますが、根本的な治療ではなく押さえ込んでおくだけのものです。

 


 

鼡径ヘルニアの【手 術】
鼡径ヘルニアの手術にはいろいろな術式がありますが、高野病院ではもっとも一般的に行われているメッシュプラグ法基本としています。

 従来のヘルニアの手術はでっぱっている袋状の腹膜(ヘルニア嚢)を切除し、ゆるんだ腸がでてくる出口の部分を縫い縮めてでにくくするとともに、筋肉や筋膜を縫い寄せて補強を行う方法でした。しかし、この筋肉や筋膜を縫い寄せる際、非常に緊張がかかるため、術後のつっぱり感や痛みが長く続く欠点がありました。再発率も2~10%と報告されています。

メッシュプラグ法は、縫い寄せるかわりにポリプロピレンメッシュという人工の素材でつくられたプラグを腸の出口に挿入し、脱出を防ぐとともに、同じ素材でつくられたメッシュのシートで補強を行います。縫い寄せるのではなく当て布のようにして補強を行いますのでつっぱり感は少なくてすみます。再発率も従来法より低く、1~5%くらいといわれます。術後はすぐに歩行が可能です。3日目くらいからは通常の生活動作が可能になり、個人差はありますが2~3週間後くらいから運動も可能です。

 合併症として気をつけなければいけないのが感染症です。通常無菌手術でおこなわれますので感染率は高くはありませんが、創部に感染がおき、メッシュに及んだ場合人工物は感染に弱く、感染の場になりやすいためメッシュを除去しないと感染が治まらないことがあります。当院では術中・術後の抗菌薬投与、術後はフィルムのシートで創部を覆って細菌が創部に入りこまないようにして感染を予防しています。
他に創部の皮下組織に浸出液がたまって腫れる(漿液腫)ことがあります。自然に吸収されますが、たまった量が多い場合には注射器で吸引することもあります。
詳しくは入院時に主治医から説明があります。

手術は腰椎麻酔(下半身麻酔)で行い、約1時間で終了します。
術後は3~7日で退院となります。(日帰り手術は行っていません)
当院では表面に糸の出ない真皮縫合を基本としているため抜糸は不要です。

                                                      (文責 外科:中村 寧)