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医薬品情報

刺激性下剤と過敏性腸症候群

刺激性下剤と過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(一般的には大腸過敏症ともいいます)は、腹痛と下痢・便秘などの便通異常が見られる病気で、基質的的疾患(ポリープや潰瘍など)がなく、検査をしてもなかなか異常が認められず、大腸の動きが悪くなっている状態をいいます。

過敏性腸症候群の主な原因
・ 心理社会的刺激(ストレス)によるもの
・ 薬剤、特に下剤の乱用により大腸や小腸などの消化管が刺激され、過敏状態になる。
・ 不規則、偏った食生活、過度の飲酒などによるもの
・・・などなど

ここでは過敏性腸症候群の原因のひとつである、下剤の乱用についてご紹介します。

過敏性腸症候群の原因となる下剤には、センナ、ダイオウなどのいわゆる刺激性下剤があげられます。
センナやダイオウなどは、大腸の粘膜を刺激して、便を運ぶ運動(蠕動運動)を高めることで排便を促すのですが、服用が長期・大量になると腸のけいれんを引き起こします。その結果、正常な蠕動運動が出来なくなってしまい、腹痛や排便困難が起きてしまうのです。

このような状態では、腸の中のガスも排出されにくくなりますので、腸にガスが溜まり、ガス型過敏性腸症候群となったり、便秘型過敏性腸症候群になったりします。


過敏性腸症候群の治療薬について

過敏性腸症候群の治療は、その原因や症状に合わせて、心理療法、薬物療法、食事療法など多方面からのアプローチが必要となります。
ここでは、過敏性症候群の薬物療法についてご紹介します。
以下にあげる薬の名称は当院で採用している薬剤です。他の製薬会社が、別の名前で販売しているものもあります。

便秘型:
検査の結果、大腸がけいれんしている場合は、腸のけいれんを止めて、腹痛や便通異常を改善する必要があります。
トランコロン®、セレキノン®、チアトン®、ブスコパン®などがあげられます。ガスが貯留するガス型では、ガス吸着剤としてガスサール®(ガスコン®という薬が一般的です)や、漢方薬の桂枝加芍薬湯が有効な場合があります。
便秘の改善のために、酸化マグネシウム製剤や浸潤性下剤のベンコール®などを併用することもあります。

下痢型:
男性の下痢型過敏性腸症候群の薬として、イリボー®という薬があります。これは下痢止めとは異なり、体内のセロトニンという神経伝達物質の働きをブロックする薬です。女性には効果が認められず、かえって副作用が多く出ることから、男性に限って使用することが出来ます。
※平成27年5月より、女性の方にも使用できるようになりました。

そのほか、ストレスが原因となっている場合には、抗不安薬や抗うつ剤、自律神経調整剤が効果的な場合があります。当院では、ビオフェルミン®という乳酸菌製剤に自律神経調整剤(ハイゼット®やグランダキシン®など)を配合した整腸剤を処方しています。
抗不安薬には、腸のけいれんを抑える作用があるものもあり、これらを組み合わせて治療を行います。

以上の薬剤は、過敏性腸症候群の症状緩和に有効ですが、薬だけで治すことは困難です。前出の心理療法、運動療法や食事療法、日常生活でのリラクゼーションや、ライフスタイルの見直しなど、総合的な治療が必要となります。


(参考文献)「専門のお医者さんが語る Q&A 大腸の病気」高野正博著(保健同人社)