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疾患情報

消化器内科

炎症性腸疾患(IBD)-潰瘍性大腸炎、クローン病

クローン病の栄養療法 - ラコールの投与例
IBD(潰瘍性大腸炎・クローン病)情報

クローン病の寛解維持期の栄養療法

(半消化態栄養剤ラコールの有用性)


1.ラコールによる経腸栄養療法の可能性

最近、脂肪の種類によって腸管上皮機能への影響や炎症惹起作用に違いがあることやω(オメガ)-3多価不飽和脂肪酸(リノレン酸など)がω-6多価不飽和脂肪酸(リノール酸など)に比べ炎症惹起作用が少なく、ω-3/ω-6比を高めた脂肪摂取はクローン病の病態の悪化に影響しない可能性が示されています。
成分栄養剤の有効性を発揮する機序として、窒素源がアミノ酸であることと極端な脂肪制限が大きな要因と考えられていますが、今後クローン病の栄養療法を実施する上で脂肪の量のみならず質についても検討していく必要があることが指摘されています。
そこで高ω-3/ω-6比を特徴とする半消化態栄養剤ラコールがクローン病の栄養療法に用いられるようになってきました。最近、活動期クローン病の患者に対して、ラコール1,600~2,000mlを経鼻経管法(桜井ら)、経口投与法(柏熊ら)で投与し寛解導入できたことが報告されています。高野病院では、寛解期の在宅経腸栄養療法としてラコールを積極的に使用しています。


2.緩解維持期のラコールを用いた在宅経腸栄養療法

クローン病の再燃予防および寛解維持を目的として、従来から成分栄養剤(エレンタール)による経腸栄養療法が広く行われていますが、その特有の匂いや味覚の点から経鼻経管による投与が一般的です。しかし、経鼻チューブの自己挿入が出来ない、あるいは経口摂取が出来ない患者も少なからずみられます。患者への受容性は必ずしも高くはありませんが、投与量の減少や中止をせざるをえない場合も少なくありません。そこで、エレンタールに加えて高ω-3/ω-6比を特徴とする半消化態栄養剤ラコールの投与を行っています。
2001年6月から2002年3月までにラコールの投与を開始したクローン病33例(男性23例、女性10例)を対象としましたが、クローン病の寛解維持期の栄養補助療法として良好な結果を得ています。
ラコールに対する患者の受容性の評価を表に示しました。受容性は良好でした。ただし、長期間の服用では味が飽きてくるため、風味のバラエティー化の要望がありました。(なお現在は、ミルク、コーヒー、バナナの3種類の風味があります。)
以上、ラコールは患者の受容性が良好で、クローン病の寛解維持期の栄養補助療法として有用な経腸栄養剤であると思われます。


3.ラコールの在宅経腸療法としての位置付け

本来、クローン病の栄養療法としては成分栄養剤による経腸栄養療法が推奨されています。しかし、われわれの検討から成分栄養剤に変えてラコールの経口投与でも寛解維持効果が得られることが示されました。
今後クローン病患者のQOLやADLを考慮に入れた在宅経腸栄養療法として、成分栄養剤のみの投与にこだわらず、エレンタールとラコールの併用投与、もしくはラコールの単独投与も有用であると思われます。