疾患情報
消化器内科
炎症性腸疾患(IBD)-潰瘍性大腸炎、クローン病
薬物療法 - クローン病に対するレミケード療法
クローン病は、小腸、大腸を中心に原因不明の炎症が持続し、腸管の潰瘍から始まり、狭窄、膿瘍、瘻孔をきたす疾患です。したがって治療上で持続する腸管の炎症を効果的に制御することがたいへん重要です。 (上図:田辺製薬の資材より引用) 1.難治で重症から中等症の活動期クローン病に対して 図2.CDAIの算出法 A. 過去1週間の軟便または下痢の回数 ×2 = a B. 過去1週間の腹痛 C. 過去1週間の主観的な一般状態 1)関節炎・関節痛 2)虹彩炎・ぶどう膜炎 3)結節性紅斑・壊死性膿皮症・アフタ様口内炎 4)裂肛・痔瘻または肛門周囲膿瘍 5)その他の瘻孔 6)過去1週間100。F(37.8。C以上の発熱) E. 下痢に対してロモチルまたはオピアトの服用 F. 腹部腫瘤 G. ヘマトクリット(Ht) 男(47-Ht) ×6 = g H. 体重:標準体重 100(1-体重/基本体重) = h CDAI = a + b + c + d + e + f + g + h CDAI が、 150以下:非活動期 、450以上:非常に重症 (Best,W.R.,et al.;Development of a Crohnfs disease activity index. Gastroenterology,70:439-444,1976より) 2.瘻孔を持つクローン病に対して3ヶ月以上続く腸管皮膚瘻(腸と皮膚の間にトンネル)や痔瘻(肛門の周囲に膿のトンネル)を持つクローン病の患者さんで0週、2週目、6週目に体重1kgあたり5mgないし10mgが投与され、68%で瘻孔の数が約1/2に減少し、46%で瘻孔がすべて消失しました。 次に副作用ですが、投与直後には、発熱・悪寒5%、痒み・じんましん1%、胸部痛・高血圧・低血圧・呼吸困難1%などがみられました。それ以後に起きる副作用には、感染の3%に重症感染症、自己抗体が24%に出現し、一部でループス様症候群がありました。抗TNF-α抗体との因果関係は明らかではありませんが、350例以上投与患者中、数例のリンパ腫が報告されています。 現在わが国では4000例以上の患者さんにレミケードが投与されています。高野病院では、30例(活動期19例、難治性痔瘻11例)の患者さんに投与しています。レミケードの効果は8週以後には次第にうすれることが報告されています。そこで寛解状態を長く持続させるため、イムランなど免疫調整剤の併用療法の有効性が話題になっています。 また2~3ヶ月ごとに繰り返し投与していくのが有効なのか検討が行われています。レミケードの投与にあたっては、投与前に結核の感染がないかツベルクリン反応や胸部レントゲンなどで検査する必要があります。 このように、レミケードはクローン病に対する根治療法ではありませんが、これまでの治療法では効果の乏しかった患者さんに、十分な効果や入院期間短縮が期待されます。 3.トピックス |