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疾患情報

消化器内科

炎症性腸疾患(IBD)-潰瘍性大腸炎、クローン病

炎症性腸疾患(IBD) Q&A
IBD(潰瘍性大腸炎・クローン病)情報

Question

【潰瘍性大腸炎Q&A】
漢方薬の効果についてはどうですか。
サラゾピリンはどのくらいの期間飲み続ける必要があるのでしょうか。
サラゾピリンの副作用の一つである無精子症は、しばらく薬をやめれば元に戻るということですが、どのくらいの期間で元に戻るのか、あるいは薬を減量するだけではだめなのかでしょうか。
現在開発中の治療薬および予定の治療薬について教えて下さい。
潰瘍性大腸炎で病期が長くなった場合の合併症にがん化あると聞きましたが、実際どうなのか教えて下さい。
潰瘍性大腸炎の合併症について教えて下さい。
普段の生活ではどういった事(運動、食事、生活状態など)に気をつけたらいいですか?
潰瘍性大腸炎と就業、就職について制限することがありますか。
仕事のつきあい等でどうしても宴会にでなくてはいけないことがあります。飲酒について目安があれば教えていただきたいのですが。
潰瘍性大腸炎は遺伝するのでしょうか。
最近風邪をよく引きます。ウイルスなどに弱い身体になるのでしょうか。
震災時に交通機関が寸断され、医療機関も混乱をきたした場合、診察をどこで受け治療薬をどこでいただけばよいのでしょうか。緊急時に備えた対策は何をすればよいでしょうか。
病状に変化がなくても内視鏡検査は必要なのでしょうか?


【クローン病Q&A】
食事は何を摂ればよいのでしょうか?
クローン病に非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDsといわれるロキソニン、ボルタレンなど)を使うと症状が悪化するというのは本当でしょうか?
クローン病の緩解期での食事では、脂肪や線維はどの程度制限すればよいのでしょうか?
クローン病と運動について教えて下さい。
クローン病と就業について、どのような点に注意する必要がありますか。
クローン病患者の結婚について気をつける点などを教えて下さい。
小腸に狭窄が数ヶ所あり、心配です。今後の注意点を教えてください。
クローン病は遺伝するのでしょうか。
クローン病の患者さんは癌化とは関係あるのでしょうか。
一度硬化し狭窄をきたした腸管を再びもとの拡張させ、もとの状態にもどすことは可能でしょうか。
クローン病は加齢とともにどのように変化していきますか。
小腸切除術を繰り返し、小腸が短くなっていると、栄養障害がおきてきますか。
病状に変化がなくても内視鏡検査は必要なのでしょうか?
 

潰瘍性大腸炎Q&A


Q.漢方薬の効果についてはどうですか。

A. : 柴苓湯などのいくつかの漢方製剤が有効であったとする報告はあります。しかし、単独投与での効果や一般的な治療法との比較検討をした報告はほとんどなく、確立した治療法といえないのが現状です。
Q.サラゾピリンはどのくらいの期間飲み続ける必要があるのでしょうか。

A. :通常寛解期になってからも2-3年は維持療法として治療を続けるのが原則です。しかし、5年以上ずっと寛解が続いていたにもかかわらず、サラゾピリン中止後、突然再燃した患者さんもいるので、はっきりとした目安はありません。自己判断で中止しないで必ず主治医の先生と相談して下さい。長期に服用することの安全性については確認されています。
Q.サラゾピリンの副作用の一つである無精子症は、しばらく薬をやめれば元に戻るということですが、どのくらいの期間で元に戻るのか、あるいは薬を減量するだけではだめなのかでしょうか。

A. :サラゾピリンの副作用として、精子の数が減少することによる男性不妊があります。しかし、これは可逆性であり、サラゾピリンの内服中止により正常に戻ります。精子数が元に戻るまでの期間は、平均2~3ヶ月と言われています。お子さんをつくられる方は、その時だけでも完全に服薬を中止し、その後再開する方が多いようです。また、ペンタサでは男性不妊の報告は現在のところありません 子供への影響に対しては、妊娠中のペンタサ内服による奇形の報告はありません。むしろ、サラゾピリンの内服中止による妊娠中の潰瘍性大腸炎の増悪が、胎児に悪影響をおよぼすことがあるという報告があります。寛解期に妊娠した場合には、ほぼ正常出産で流産・先天奇形の発生率は健康人と変わらないとされていますが、妊娠を希望される場合には事前に必ず主治医に相談して下さい。ステロイドの投与も特に問題がなく、安全であるとする報告が多いようです。なお、イムランなどの免疫抑制剤の使用はしないようにして下さい。
Q.現在開発中の治療薬および予定の治療薬について教えて下さい。

A. :根治的治療の開発にはまだ時間がかかると思われますが、局所の免疫反応や炎症反応を抑える目的で、様々な新しい治療法が開発されてきています。そのひとつが局所ステロイド療法です。 肝臓で速やかに代謝され、全身的な副作用が少なく、局所における高い抗炎症作用有するステロイド剤(ブデソナイドなど)があります。欧米では既にその特徴をいかして、注腸用製剤が製品化されています。しかし、本邦では保険で認められていません。早く一般臨床でも使用できるようになることが待たれます。
Q.潰瘍性大腸炎で病期が長くなった場合の合併症に癌化あると聞きましたが、実際どうなのか教えて下さい。

A. :慢性に炎症が持続すると炎症を母地とした癌の発生率が高くなります。潰瘍性大腸炎患者さんでは、一般の人と比べると大腸癌の発生率が高いといわれています。若年発症、全大腸炎型、慢性持続型で10年以上長期経過した方に多いとされており、海外では3%程度といわれています。当院でも既に何例かの潰瘍性大腸炎から発生した大腸癌を手術しています。特に潰瘍性大腸炎の長期経過例では癌化の可能性もあり、少なくとも年1回程度の定期検査(サーベイランス・コロノスコピー)が必要と考えます。特に発症から10年以上経過した全大腸炎型、左側大腸炎型では1年に1回の全大腸内視鏡検査を受けてください。
Q.潰瘍性大腸炎の合併症について教えて下さい。

A. :アフタ性口内炎、関節炎・関節痛(肘、手、膝、足関節痛・炎、仙腸関節炎、強直性脊椎炎)、肝障害(脂肪肝、胆管炎)、眼病変(虹彩炎、ぶどう膜炎)、皮膚病変(壊疽性膿皮症、結節性紅斑、乾癬)、尿路結石等があります。
Q.普段の生活ではどういった事(運動、食事、生活状態など)に気をつけたらいいですか?

A. :睡眠不足や過労に気をつけて、リズムのある規則正しい生活が重要です。食事内容は消化の良いものをバランスよく摂って下さい。あまり食事内容にこだわる必要はないと思います。運動に関しては、病気の状態が落ちついていれば、基本的には特別な制限はありません。しかし、ステロイドの大量内服中や、運動が疲労の原因と考えられる時や便の回数が増えるような時は控えめにして下さい。
Q.潰瘍性大腸炎と就業、就職について制限することがありますか。

A. :仕事の内容に関しては、制限することはありません。寛解期には問題ないと思います。ただし、過労や過度のストレスで増悪する可能性があることや増悪期には長期入院が必要となることなど、ある程度まわりの理解が必要だと思います。
Q.仕事のつきあい等でどうしても宴会にでなくてはいけないことがあります。飲酒について目安があれば教えていただきたいのですが。

A. :どのくらいまでなら大丈夫というデータはありません。実際には飲み始めれば一杯のつもりが多くなってしまうことがあります。そのため病状が悪くなる可能性もあり、現時点ではアルコールはだめですとしか言いようがありません。これはクローン病でも同じです。
Q.潰瘍性大腸炎は遺伝するのでしょうか。

A. :遺伝的な要素がないわけではありません。しかし、単一の遺伝子によって遺伝する病気ではなく、環境因子などが複雑に絡み合って発症するとされています。遺伝因子以外に様々な環境因子が複雑に絡み合って病気を形成しており,遺伝だけで発症が決まるわけではなく、あまり心配する必要はないと思います。
Q.最近風邪をよく引きます。ウイルスなどに弱い身体になるのでしょうか。

A. :ステロイドを大量に長期使用している患者さんでは免疫力が落ちて、感染症にかかりやすいこともあります。しかしこの病気自身が直接風邪を引きやすいこととはあまり関係はないと考えられます。
Q.震災時に交通機関が寸断され、医療機関も混乱をきたした場合、診察をどこで受け治療薬をどこでいただけばよいのでしょうか。緊急時に備えた対策は何をすればよいでしょうか。

A. :震災や災害時には、特に遠方の患者さんでは通院が困難になると予想されます。その際は地域の中核病院が医療活動に当たると考えられます。現在服用している薬を把握しておき、可能であれば余分にストックしておくことも大切です。医療機関側も災害時の情報ネットワークを確立する事が今後の課題と考えられます。当院でも災害時の対応について検討しています。
Q.病状に変化がなくても内視鏡検査は必要なのでしょうか?

A. :症状や採血データの経過を追うのが重要なのと同様、緩解期でも1年に1度程度の内視鏡検査は必要と思われます。特に潰瘍性大腸炎の長期経過例では癌化の可能性もあり、少なくとも年1回程度の定期検査(サーベイランス・コロノスコピー)が必要と考えます。特に発症から10年以上経過した全大腸炎型、左側大腸炎型では1年に1回の全大腸内視鏡検査を受けてください。

クローン病Q&A


Q.食事は何を摂ればよいのでしょうか?

A. :クローン病の治療では、完全静脈栄養や成分栄養療法等の栄養療法が活動期の寛解導入、さらには寛解維持効果があることが確認されています。また、在宅成分栄養療法は寛解維持に役立ち、生活の質の点からも優れた治療法ですが、食事に移行するにつれて再燃が多くなります。寛解維持のためには、低脂肪、低残渣、低刺激を心がけましょう。潰瘍性大腸炎における栄養療法は、クローン病に準じますが、その位置づけは異なっています。すなわち、食事療法そのものは腸管の炎症を治す第一選択の治療とはなりえず、補助的療法として位置づけられています。
Q.クローン病に非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDsといわれるロキソニン、ボルタレンなど)を使うと症状が悪化するというのは本当でしょうか?

A. :NSAIDsの内服により炎症性腸疾患が増悪したのではないかとする報告がありますが、その因果関係は現在のところ不明です。関節症状に対してNSAIDsはよく使用していますが、我々の施設では数例増悪した患者さんを経験しています。内服される時は主治医とよく相談して下さい。少なくとも感冒時における短期間の使用であれば問題ないと思います。
Q.クローン病の寛解期での食事では、脂肪や線維はどの程度制限すればよいのでしょうか?

A. :寛解期においても、再燃予防の意味で、低脂肪食、線維分の少ない食事に心がけることが必要ですが、増悪している時に比べ、制限をゆるめることができます。個々の患者さんにおいて、かなり消化吸収、機能が異なりますので、絶対に食べてはいけないものは、基本的にはありません。しかし、自分にとって食べると調子悪くなる食品や香辛料を理解し、避ける努力をすることが大切です。
Q.クローン病と運動について教えて下さい。

A. :基本的には特別な制限はありません。しかし、ステロイド大量内服中や、運動が疲労の原因の場合や便の回数が増えるようなときは控えめにして下さい。やり過ぎて過労にならないように心がけましょう。
Q.クローン病と就業について、どのような点に注意する必要がありますか。

A. :仕事の内容に関しては、制限することはありません。ただし、過労や過度のストレスで増悪する可能性があることや、増悪期には長期入院が必要となることなど、ある程度まわりの理解は必要であると思います。激しい肉体労働や長時間の深夜勤務は避けたほうが良いと思います。
Q.クローン病患者の結婚について気をつける点などを教えて下さい。

A. :基本的な結婚生活に関しては、健康人と全く同じと考えてよいと思います。問題となるのは妊娠や、子供への遺伝の問題です。妊娠については、寛解期に妊娠すれば正常産が多く、流産率・先天奇形の発生率は健康人と変わりないとする報告が多いようです。また、男性の場合、サラゾピリンの服用により精子の数が減少し、妊娠しにくくなる可能性がありますが、サラゾピリンの中止やペンタサへの変更により回復します。
Q.小腸に狭窄が数ヶ所あり、心配です。今後の注意点を教えてください。

A. :腸閉塞症状はクローン病では高頻度に認められます。クローン病の腸管狭窄の原因には2種類あり、1つは炎症が著明な場合、もう1つは腸管病変が治る過程でおこる線維性瘢痕に伴う場合です。腸管の炎症が激しくなって狭窄を来している場合は、入院下の内科的治療(絶食下で点滴治療など)が必要です。この場合は、治療で腸管の炎症が治まるにつれて狭窄は改善してきます。一方、狭窄の原因が線維性瘢痕による場合は、これは、クローン病の長期経過に伴い、つまりクローン病の再燃を繰り返すことで出現するものなのですが、この場合の狭窄は殆どが非可逆性です。狭窄の程度にもよりますが、腸の内容物の通過障害によって腸閉塞を繰り返す場合は、外科的な治療を考慮しなければなりません。なお狭窄に対する手術も、最近は、小範囲切除として、狭窄形成術という術法が施行されるようになり、術後は通過障害が改善され、経口の食事摂取なども可能となります。
Q.クローン病は遺伝するのでしょうか。

A. :クローン病は約1.5%に家族内発症を認め、わが国では欧米に比べて家族内発症が多いといわれています。クローン病の家族内発症例を検討してみますと、同一家系内ではクローン病の病気の部位や病気のタイプが同じことが多いといわれています。病気の発症の一因子として、遺伝というものはあげられます。しかし、遺伝性のものだけでは発症しないようで、その遺伝にいくつかの環境因子など他の因子が関与して発症するのではないかと考えられています。
Q.クローン病の患者さんは癌化とは関係あるのでしょうか。

A. :今のところクローン病の方が癌になりやすいという、はっきりした報告はありません。また、なりにくいとも言われていません。今後の研究課題になっています。
Q.一度硬化し狭窄をきたした腸管を再びもとの拡張させ、もとの状態にもどすことは可能でしょうか。

A. :一時的に腸の粘膜が炎症性の浮腫を起こし狭窄をきたした場合には、治療により炎症がひけば狭窄がとれる場合がありますが、炎症が持続して腸管壁が線維性に硬化して狭窄をきたした場合には、薬剤でもとの状態に戻すことは現在では困難です。内視鏡が届く範囲の病変に対しては内視鏡を用いて、バルーン・カテーテルで拡張できる場合があります。高度の腹部膨満感や嘔吐など、腸の狭窄による症状が強い場合には、外科的に腸の狭窄部を切除したり、狭窄部に切開を加えて拡張するような手術(狭窄形成術)による治療が必要となります。
Q.クローン病は加齢とともにどのように変化していきますか。

A. :クローン病の炎症の活動性は、発症からの経過期間が長くなるにしたがって低下する傾向があります。10年以上の長期観察例では約4割の症例が経過良好群に入っています。 しかし、累積手術率は、10年後に40%、15年後50%と発症後増加を示しています。手術理由で多いのは腸管の狭窄あるいは腸閉塞です。診断後15年での生存率は96.9%と良好であり、治療法の改善により更なる向上が期待されます。

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Q.小腸切除術を繰り返し、小腸が短くなっていると、栄養障害がおきてきますか。

A. :小腸が広範に切除されると、栄養素を吸収できる面積が減り、消化吸収障害が起こります。小腸を切除した部位および範囲により、消化吸収の能力、栄養状態は異なります。胆汁酸やビタミンB12の吸収が行われる回腸末端が切除されると、その切除範囲に応じて下痢や脂肪便をきたし、ビタミンB12欠乏状態となります。また、脂肪の消化が不十分となり、カルシウムと結合して、腸管内で溶けたまま大腸で吸収をうけ、腎結石ができやすくなります。空腸からはいろいろな消化管ホルモンが産生されるため、広範囲に切除されると、消化障害をもたらします。残っている腸管が短い場合、腸管の安静を保つためには経腸栄養剤は有効な治療です。クローン病自体の活動性や、再発を繰り返した頻度、残っている小腸の機能などにより、経腸栄養剤のみで経過をみた方が良いか、低脂肪低残渣食を併用できるかは、個々の患者さんによって異なります。自分の腸の状態や、どのくらい小腸が残っているのか主治医から十分に説明を受けて下さい。
Q.病状に変化がなくても内視鏡検査は必要なのでしょうか?

A. :症状や血液検査で経過を追うのが重要なのと同様に、病変の状態を把握するために、寛解期でも1年に1回程度の内視鏡検査は必要と思われます。また、小腸病変の評価には小腸造影が必要です。